DJたまごやき / シングル リリース インタビュー!
- 3 日前
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「日常の中にある“臨界点”を、そのまま音にしたかった」という「DJたまごやき」の9thシングル『KITCHEN』は、日常の奥に潜む“見過ごされがちな瞬間”に、そっと光を当てる一曲だ。日常の切り抜きのように描かれる感情の揺れ。その奥にあるものとは何か。静かな熱を孕んだこの楽曲の背景を、言葉から紐解いていく。
interview by 齋藤泰人(Hooky Records)
2026.04.29
— 『KITCHEN』というタイトルがまず印象的です。かなり具体的な場所ですよね。
DJたまごやき そうですね。すごく生活に近い場所というか、自分にとっては「一番無防備になれる場所」なんですよ。キッチンって、料理をする場所でもあるけど、考え事をしたり、ぼーっとしたりする場所でもあって。そういう “何かが起こりそうで、何も起こらない時間” が結構好きで。
— なぜその場所をタイトルにしようと思ったんですか?
DJたまごやき 特別な場所というより、あくまで “どこにでもある場所” にしたかったんですよね。自分だけの話にしたくなかったというか、誰の生活の中にもある風景として成立するものにしたくて。その中で、一番しっくりきたのがキッチンでした。
— この曲は、どういう流れで形になっていったんですか?
DJたまごやき 1stアルバム『ひとくせ』を出してから、少し時間があって。その間に、すごく大きな出来事があったわけじゃないんですけど、日常の中で感じることはずっとあって。キッチンにいる時間もそうなんですけど、何かをしているわけじゃないのに、頭の中ではいろいろ考えてる瞬間があって。そういう時間の中で溜まっていったものを、そのまま曲にした感じに近いです。
— 考えてる瞬間というのは、どんな感覚なんですか?
DJたまごやき 外から見ると何も起こってないように見えるんですけど、自分の中ではずっと何かが動いてる感じというか。整理されているわけでもなくて、ただ感情がそのまま置かれていくような時間ですね。
— その時間を切り取った曲なんでしょうか?
DJたまごやき いや、むしろ逆で。何も起こってないように見えるけど、内側ではずっと何かが動いてる、みたいな。自分の中で溜まっていくものがあって、それがある瞬間に溢れるじゃないですか。『KITCHEN』は、その直前というか、“感情の臨界点” みたいなところを描きたかったんです。
— “感情の臨界点” って、どんな瞬間なんでしょう?
DJたまごやき すごく小さいきっかけだと思うんですよ。例えば、ちょっとした一言だったり、何気ない出来事だったり。それ単体では大したことないんですけど、それまでに溜まっていたものと重なったときに、一気に崩れるというか。そういう "急に来る感じ" は、日常の中に結構あるなと思っていて。
— 歌詞にも、その感覚は強く表れていますよね。
DJたまごやき そうですね。あまり説明しすぎないようにはしていて、その瞬間の感覚がそのまま伝わる形にしたかったんです。はっきりと言い切るというより、少し余白を残すことで、聴く人それぞれの生活に重なるようにしたいなと思っていて。
— 音像としても、かなり“近い”質感がありますよね。
DJたまごやき そうですね、距離感は結構意識しました。ジャンキーさというか、ちょっと粗さがあるくらいの方が、逆に身近に感じられる気がしていて。生活の中でじわじわ溜まっていく感情って、そんなに綺麗なものじゃないと思うので、そこはあえて整えすぎないようにしました。

— 最近の私生活はどうですか?キッチン(きちん)とした生活を送っていますか?
DJたまごやき 普段はバイトと家の行き来がほとんどですね(笑)。キッチン(きちん)とした生活ではあるかもしれないですが、精神的にはあまり健康とは言えないですね。
— 遊んだりしないんですか?
DJたまごやき たまに遊ぶことはありますけど、基本的に休みの日は制作しているので、あまり遠出はしないです。
— 普通の生活ですね。いわゆる普通の生活者にこそ “臨界点” に達しそうになったら『KITCHEN』聴いてほしいですね。
DJたまごやき そうですね。手の届くところに置いておいて欲しいです(笑)。
— 音楽以外の趣味はありますか?
DJたまごやき ラジオですね。何も考えずに人の喋りを聞いている時間が好きです。
— ご自身でもラジオ番組やってますよね。
DJたまごやき 僕は「DJたまごやきのひげらじ」という番組を NFRS Radio でやっていますが、やっぱり等身大の自分の言葉で伝えることを大事にしています。
自分が好きなパーソナリティの方たちにも、そういう魅力を感じることが多いんですよね。
— たとえばどなたですか?
DJたまごやき 星野源さん や Creepy Nuts の二人ですね。自分を大きく見せようとしないというか、すごく自然体でいるように感じます。

— 話は戻りますが、今回の『KITCHEN』は詩が先ですか?曲が先ですか?
DJたまごやき 今回は曲が先ですね。もともと音の方から作ることが多くて、今回もまずは雰囲気というか、音でどこまで表現できるかを大事にしていました。その中で見えてきたものを、あとから言葉にしていく感覚に近いです。
— 裏打ちのリズムでレゲエの影響を感じました。珍しいテイストでは?
DJたまごやき そうですね。アルバムを出した頃は、ボサノヴァだったりレゲエをよく聴いていて。いざ新曲を作ろうと思ったときに、今まで自分があまり使ってこなかったテイストを取り入れてみたかったんです。例えばギターのバッキングを裏打ちで入れてみたり、パーカッションも機械的なんだけど、どこか温かくてコミカルに聴こえるような音にしてみたり。そういうのを好奇心でいろいろ試していった曲ですね。大前提として、PUNPEEさん のサウンド感がすごく好きで。ジャンキーでカオスなんだけど、どこか懐かしさや温かみがあるあの感触は、今回かなり意識しています。
— あのコミカルな感じって良いですよね。あの空気感って意図的に表現したんですか?それとも偶然?
DJたまごやき 意図的にですね。僕が作る曲って、どこか皮肉が混ざったメッセージになることが多いんですけど、だからこそ、なるべくコミカルに表現したいと思っていて。それはリリックだけじゃなくて音でも同じで、『KITCHEN』ではその "コミカルさ" をより強調して作りました。例えば、まな板の音みたいな、日常の中にある特徴的な音をあえて使ったりしていて。そういう細かいところでも空気感を作れたらいいなと思っています。
— 「トトントントン」ですね(笑)。
DJたまごやき そうです(笑)。これからは、もう少しキャッチーなバースも書いていきたいなと思っていて。これまでの良さは残しつつ、もう少し間口の広い表現もできたらいいなと。
— 冷しゃぶはどこから?
DJたまごやき 僕自身、あまり料理をするタイプではなくて。でも 冷しゃぶ とかは、茹でるだけで簡単にできるじゃないですか。料理って本当は生命に直結するくらい大事なものだと思うんですけど、どうしても面倒くさいと感じてしまう瞬間もあって。ついコンビニで済ませてしまったりとか。だからこそ、別に大層なものを作らなくてもいいというか、手を抜きながらも自分で作る “勇気” みたいなものも大事だと思うんです。そういう、気負わない自炊というか。日常の中にある、そういう感覚を書きたかったです。
— お話を伺っていると “日常” や “自然体” という言葉が多いですよね。ご自身にとって “日常” とはどのようなものですか?また、なぜそれを表現するのですか?
DJたまごやき 僕には、いわゆる明るい未来とか、スターになりたいみたいな分かりやすい野望があまりなくて。どちらかというと、今を生きることに必死というか、先のことをうまくイメージできないんですよね。だからなのか、自分が好きになる音楽も、“そこにある今” を歌っているものが多い気がしていて。その “今” 、つまり日常って、地味に見えるけど、一番いろんな感情が動く場所だと思うんです。苦しかったり、悩んだり、でもふと嬉しくなったり、幸せを感じたり。人生のほとんどって、決して派手じゃない、なんてことのない日常の積み重ねじゃないですか。だからこそ僕は、ドラマチックな出来事よりも、誰もが普段生きているその “日常” をちゃんと表現したいなと思っています。
— まさに “たまごやき” みたいですね。上手いこと言えたのでこれでインタビュー締めていいですか?(笑)
DJたまごやき 締めましょう(笑)。
— 最後に、『KITCHEN』を聴く人に向けて。
DJたまごやき 派手な曲ではないと思うんですけど、そのぶん、刺さる人にはちゃんと深く届く曲になっていると思います。何気ない日常の中で、ふとしんどくなった時とか、少し感情が溜まってきたなっていう瞬間に、そっと寄り添えたら嬉しいです。ぜひ、自分の生活の中で聴いてもらえたらと思います。

日々の生活から音楽は生まれる。ふとした時に風情が生まれる。人間味が溢れる音を紡ぐアーティスト。ラッパー・作曲家・写真家・プロデューサー。様々な顔を持つ多才なクリエイター。
【経歴】2004年生まれ 22歳 。東京を拠点に活動するラッパー。楽曲制作から映像撮影まで自身で行う 。他アーティストへのプロデュースや楽曲提供を重ね、2025年 12月には自身初のアルバム「ひとくせ」をリリース。ソロ活動にも注力し始める。
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