Uesaka / Snooze Potato アルバム リリース インタビュー!
- Hooky Records

- 10月6日
- 読了時間: 9分

インターナショナル・オルタナティヴロックバンド「Snooze Potato」が結成8年目にして初となるフルアルバム『Conquistador』をリリースした。バンドのベーシストであり全てのレコーディングを担当するUesakaにアルバムレコーディングに関しての話を中心にインタビューを行いました。「Snooze Potato」の礎が垣間見える貴重なインタビューをどうぞ!
interview by 齋藤泰人(Hooky Records)
2025.10.06
ー アルバムリリースおめでとうございます。
Uesaka ありがとうございます。昨年12月にライブ会場限定CDとして販売していた音源ですが、今回ようやくサブスクにも配信することができました。
ー 今の気持ちを教えて下さい。
Uesaka 現時点の理想のミックスができたので、今は早く次の作品で別のアプローチを試したい気持ちがありますね。「Snooze Potato」は育休でライブ活動をしばらくお休みするのですが、実は何曲かドラムのストックがあるので、そう遠くないうちにまた音源がリリースできそうです。
ー それは楽しみです!レコーディングを担当しているのはバンド結成当初からですか?
Uesaka はい、「Snooze Potato」の音源は全てセルフレコーディング・セルフミックスで作成しています。最初の頃は、当時のドラマー(りえいす)がスタジオでレコ&ミックスしてもらったドラムだけの2Mix音源に、残りのパートを追加する形でミックスしていました。今ではドラムのレコーディングからミックスまで、全て自分たちの手で仕上げています。
ー レコーディングをするようになったキッカケを教えて下さい。
Uesaka 気が付けば自然と…という感じで、これといったキッカケはなかったように思います。大学1年生の頃に初めてバンドサークルに入って、無謀にもいきなりオリジナルバンドを組んだのですが、そこでDTMで作曲を始めました。当時のバンドのギタリストがDTMをやっていたので、彼の影響でミックスの知識がついていきました。その後、3年生の頃に組んだバンドのドラマーがPAやレコーディングの知識を持っていたので、一緒に作業させてもらいながら、レコーディングの知識も身につけていきました。今思うと、とても環境に恵まれていたなと思います。
ー レコーディングを担当するのは自然な流れだったのですね。
Uesaka そうですね。自分、やれます!という感じで(笑)。
ー レコーディングのこだわりを教えて下さい。
Uesaka いくつかあるのですが、いちばんは各パートの存在感の調整です。「Snooze Potato」の楽曲は一見すると単純明快な歌モノやパワーポップのように思えるのですが、実は各パートの絡みがとても面白くて、ドラム・ベース・ギターの裏メロが常に入れ替わりながら、Andrewが持つ歌のリズムやメロディに肉付けしています。そのため、今回の音源では決してボーカルやギターの音圧だけを主役にはせず、全員が同じ存在感で音を鳴らしているようなミックスを心がけました。ハイハットやタム、弦楽器のピッキングの1音1音までこだわったので、全員のフレーズがしっかり聴こえるミックスに仕上がりました。今回のアルバムを聴いて頂く際も、2周目以降は楽器隊の裏メロの入れ替わりを追ってみて下さい。2倍楽しめるかなと思います!
ー 今作のミックスで参考にした音楽作品はありますか?
Uesaka いえ、今回はリファレンス音源を用意せずにミックスしました。ありがたいことに「Snooze Potato」のライブを観てくださった方々から音量バランスや音作りについて褒めていただけることが多いので、今作ではバンドが普段ライブで出している音をそのまま再現しようと思いました。いつもスタジオで聴いているメンバーの音をイメージしながら、録り音を活かす形でミックスしています。結果的に、各々のフレーズがよく聴こえて生々しいミックスに仕上がったと思います。
ー セルフレコーディングのメリットとデメリットを教えて下さい。
Uesaka メリットは、色んなエフェクトを試したり、複数のテイクを比較したり、メンバーが納得行くまで何度でもやり直せることですね。特にドラムを気軽に録り直せるのは大きいです。実際に"Conquistador”や、”Anxiety”は、ボーカルのリズム感との絶妙な兼ね合いを追求して、ドラムをまるまる録り直しています。デメリットは…メリットと表裏一体で、時間や予算の制約がない分、いつまでも完成しない点ですね…。
ー 最高!って思った音源も翌日聴いたら...ってあるあるですよね。
Uesaka あるあるですね…。ドラムはスタジオでレコーディングするので、その場で全員で確認してOKテイクか判断します。その他のパートは各自が自宅なりスタジオなりで録音するので、ミックスしてみて違うようであればまた録り直して…ということもあります。ミックス・マスタリングに関しては、9割完成した時点でメンバーに確認して、後は私が満足するまで…という感じです。"Conquistador"の1テイク目を録音したのが2022年だったので、実に3年越しのアルバムリリースになりました(笑)。
ー プレイヤー、レコーディングエンジニア、最終ディレクション、産みの苦しみを味わってますね(笑)。
Uesaka いえ、最後の方はほぼ自分の自己満足でやらせてもらっていますので…(笑)。
ー 今までライブバージョンしか聴けなかった”House Dust”と”Anxiety”が収録されているのが嬉しいです。一方で”Casual Nihilism”と”Burn Out”が収録されていません。そこにはどのような意図がありますか?
Uesaka アルバムのコンセプトや曲順は作曲者であるAndrewが考えたものを、メンバーで話し合いながら決めていきました。今回は今まで未収録だった楽曲を中心にレコーディングし、シングルリリースしていた"It will all be fine"、"lo-fi life"の2曲をリミックスして収録する形に落ち着きました。"Casual Nihilism"はEP盤(ミニアルバム)としてリリースされているので、今回のアルバムには再録しませんでした。今回のアルバムはパワーのある楽曲が多いので、"Casual Nihilism"が入らないことで、逆にうまくバランスが取れているかな、と思います。実は"lo-fi life"もCD版ではシークレット収録という扱いでした。
ー コンポーザーとしてのAndrewをどう捉えていますか?
Uesaka Andrewの作る楽曲は、日本で生まれ育った私にとってはとてもユニークで、たくさんの発見があります。まず、日本人が書いて歌う英詩では決して表現できないようなrhythm, rhyme, melody, harmonyがありとても心地よいです。洋楽とか邦楽とか単にジャンルの違いだけではなくて、もっと根深い、物心つく前から触れてきたカルチャーとしての音楽やビートの違いが感じられます。特に本気を出したAndrewのコーラスワークは秀逸で、どこか賛美歌や聖歌隊…きっとAndrew少年が通ったであろうテキサスの街の小さな教会を連想させるような、美しいハーモニーは必聴です。ただ、平気で60トラックくらい送りつけてくるので、エンジニアとしては毎度大泣きしていますが…(笑)。
ー それは大変ですね!
Uesaka 今回のアルバムでも"Reason to Live"や"Anxiety"、"lo-fi life"などで彼のコーラスワークを聴くことができますので、是非チェックしてみて下さい。また、彼が意図しているかは分かりませんが、あまりボーカルやリフだけを軸にした楽曲を作らないのも特徴的だと思います。裏メロの話にも繋がりますが、基本的にひとつのパンチラインに頼るパワータイプの作曲者ではなく、楽曲全体のリズムやハーモニーをとても大切にする人だと思いますね。私個人はコンポーザーとしては真逆のタイプなので、非常に新鮮かつ自由度高く取り組ませてもらっています。あと、彼はthe pillowsやBase Ball Bearといった日本の音楽も大好きだし、メンバーも彼の音楽的なバックボーンを尊重しつつも決して迎合はしないので、結果として楽曲がザ・洋楽フォロワー!という感じにはならないのも、魅力のひとつかなと思います。話がとっちらかってしまいましたが、とにかく自分たちからは生まれない発見や刺激をくれるコンポーザーだと思っています。

ー ベースプレイヤーとしての聴きどころを教えて下さい。
Uesaka 昨年12月に先行発売したCDを買っていただいた方にも楽しんで頂けるように、サブスク版では別のテイクを使っていたりします。9曲中6曲は別テイクなので、是非違いを探してみてください。「Snooze Potato」では基本的にプレシジョンベースを使っていて、私自身もプレベの音が好きなのですが、今作のレコーディングではジャズベースやフレットレスベースなども使用して色々試してみました。結果的には自分が弾くとプレベでもジャズベでも似たようなゴリゴリの音になってしまうことが分かったので、おそらく自分以外の人にはどれがプレベでどれがジャズベなのか聴き分けができないんじゃないかな、と思います(笑)。
ー 「Snooze Potato」はどんなバンドに成っていきたいですかか?
Uesaka 私たちはやはりライブバンドだと思っているので、しばらく活動ペースは落ちますが、これからもライブステージをひとつひとつ大事にしていきたいと思っています。私自身はジャンル問わず、年輪を重ねたぶっといグルーヴを塊でぶつけてくるような、そんなバンドが好きです。音作りの重い軽いではなく、呼吸や縦の重みを感じられると言いますか、3ピースだろうが2ピースだろうが、ポップスだろうがジャズだろうが、2人以上の人間が際際の際まで追い込まれた状態で出した音でしか得られない栄養素がありますね。ライブハウスに行けば、熱いMCでお客さんを掴むバンド、雰囲気作りがうまいバンド、キャッチーな曲やフレーズで耳に残るバンド、年齢や性別を武器にするバンド…など、色々なバンドが出演しています。そんな中でも「Snooze Potato」は、やはりシンプルに出音で勝負できるバンドというか、最初の1音1発だけで観客を唸らせられるような、そういったバンドになっていきたいですね。
ー では最後にリスナーへメッセージをお願いします。
Uesaka 今回のアルバム『Conquistador』は、「Snooze Potato」が初期から演奏している楽曲を中心に構成されており、初めて聴く方には我々がどんなバンドなのか知っていただくきっかけに、よくライブを見てくださっている方にはおなじみの楽曲を楽しんでいただける作品に仕上がっています。まさに今の「Snooze Potato」が聴かせたい、名刺代わりの1枚となっていますので、通勤通学・家事やドライブのお供として、たくさん聴いてあげて下さい!

Uesaka
東京を中心に活動する「Snooze Potato」のベーシスト。石川県出身。大学進学を機に札幌でバンド活動を開始、1年目からギターボーカルとして多くのオリジナルバンドでライブ経験を積む。2017年大学卒業と共に上京し、ベーシストとしての活動を本格的に開始。翌年の札幌凱旋ライブにて隣のサークルの先輩であったIrokawaに偶然出会い、「Snooze Potato」に加入する。プレシジョンベースをこよなく愛しており、主にオルタナ・ロック系の激しいライブパフォーマンスを得意とする。ライブ活動の傍らレコーディング&ミックスエンジニアとしての活動や、YouTubeでのカバー活動(ZAZEN BOYSカバーチャンネル運営)も行っている。
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